年度タグ: - | おおたクリエイティブタウン事業アーカイブ

-年実施

01 おおたクリエイティブタウンとは

ものづくりのまちからクリエイティブ・ファブタウンへ

大田区は、最盛期には1万近くの「町工場」が盛んに精度の高い製造業を営むまちであり、近年でも「下町ボブスレー」などの盛り上がりを見せる、いわば、「ものづくり」のまちである一方で、東京都心部や羽田空港へのアクセスも手伝って、人口は現在でも微増し、生活都市としても発展し続けているまちです。しかしながら、製造業の担い手は大きく減少しており、豊かな地域の価値が失われつつあります。また、近年になると、新たな生産活動の担い手として、クリエイターやデザイナー・アーティスト・クラフト作家など、創造人材も区内に増えてきています。こうした新たな担い手の力も借りながら、「モノづくり」(新しいものづくり)と地域の「まちづくり」が融合して、地域の豊かな価値を生み出すことのできる、「クリエイティブ・ファブタウン」の創出が期待されています。

おおたクリエイティブタウン構想とは

おおたクリエイティブタウン構想とは、おおたのまちの豊かさを次世代にまで受け継ぎ続けるために、これまでの地域のアイデンティティでもある「モノづくり」の力を、地域の重要な資源として生かしながら、新しい価値を生み出すための創造性も採り入れ、これを暮らしの中に落とし込んでゆくための総合的な都市再編(エリア・コンバージョン)構想です。特に、?「技術」(モノづくりの力)×?「創造」(クリエイティブな力)×?「生活」(地域の力)を重ね合わせることで、大田区ならではの、地域価値を豊かに育むことができるような将来像を描いたものです。

構想を実現するための「3つの視点」と「プロジェクト」

おおたを豊かなクリエイティブタウンにするために、我々は、3つの視点と、この視点を併せ持ったプロジェクトを設定しました。3つの視点とは、?モノづくり(産業)の発展=創造産業化(モノづくりを成長させる)、?まちづくり(地域)の発展=アセットマネジメント(地域の資産を生かす)、?観光の発展=エリアプロモーション(外部の力を採りこむ)です。この3つの視点をバラバラに考えるのではなく、3つの視点をセットで重ね合わせられるようないくつかのプロジェクトを検討し、それを実行するアクションプランを検討しました。そうして考えられたのが、「モノづくりたまご」、「おおたオープンファクトリー」、「くりらぼ多摩川」などのプロジェクトです。また、これをどういう順番で実現してゆくかの戦略(アクションプラン)を検討しました。

構想を実現するためのアクションプログラム(プロジェクト)

まずは、町工場の力と地域(学生)の力をつなぐようなカプセルトイグッズの製作(モノづくりたまご)、期間限定で地域内のたくさんの町工場を無料で一斉に公開する取組み(おおたオープンファクトリー、以下OOF)、小さな町工場の活動を支え、新たなモノづくり活動を巻き起こし、地域や内外に発信するための拠点(くりらぼ多摩川)などのプロジェクトを実施してきました。今後は、大田区全体での連携協力(オープンファクトリーの大田区全体への展開やおおたクリエイティブネットワークの構築)、地域参画の窓口づくり(モノ・まちサポーター:一部OOFを支援する「ねじまき隊」として実現)、Made In OTAの製品開発、ストックの活用やルール作り(不動産等)、拠点形成(おおたクリエイティブタウンセンター)などが期待されます。

クリエイティブ・ファブ・エコシステム

こうしたプロジェクトの実現を通して、おおた全体で、いろんな新しく楽しい豊かな価値が生み出されるように、「技術」×「創造」×「生活」を生み出す場所が様々な場所に生まれ、その結果、豊かなクリエイティブ・ファブの生態系(エコシステム)が生まれることを目指しています。新しいモノづくりが生まれる創造の場、モノづくりの担い手やクリエイターなどが集まれる場、新しく楽しい暮らしが営まれる場など、まちじゅうに新たなモノづくりの拠点が生まれ、そうした拠点同士が連携して、クリエイティブ・ファブタウンが育まれるような将来像を考えています。近年、こうした動きを高める様々な拠点が大田区じゅうに立地しており(KOCA、羽田イノベーションシティ、ART FACTORY城南島ほか)、他の拠点とも積極的な連携を高めていきたいと考えています。(おおたクリエイティブネットワーク

03 おおたオープンファクトリー

職人カード

「職人カード」は、工場の経営者、社員、職人の持つ技術や人柄を的確に読み取り、キャッチフレーズとともにキャラクターとして図化し、カードとしてデザインしたものであり、主に子どもを対象とした企画です。第5回おおたオープンファクトリーでは、新田丸エリアの17工場を対象とし、イベント当日に対象工場を訪問した希望者に配布しました。第6回では、臨海部エリアも含む30工場を対象とし、10枚以上集めると特別な「ゴールドカード」がもらえる仕組みを導入し、子どもたちを中心に多くの工場を巡る様子がみられました。第7回、第8回でも実施され、開始当初から好評を博す企画のひとつとなっています。

04 くりらぼ多摩川

くりらぼ多摩川とは

くりらぼ多摩川とは、「クリエイティブタウンラボ多摩川」の略であり、大田区矢口の工場長屋の一角にある、工場をリノベーションして2013年12月にオープンしました。「モノづくりのまちづくり」を行うための地域交流拠点として、モノづくりワークショップやセミナー、展示企画など“モノづくりのまちならではの体験”をお届けしています。

くりらぼ多摩川とまちの関わり

くりらぼ多摩川には、「モノづくりのまちづくり」を実践する場として、以下のような多彩な機能が複合的に求められています。
?モノづくり体験空間
??場?学ツアーの窓?
?モノづくりに関連するデザイナーやクリエイターの活動および発信の場や製品開発を?う創造誘発空間
?上記デザイナーの作品や町?場の製品、魅?的なコンテンツなどを発信する創造発信空間
?シェア会議室空間・広告空間
?職?や地域住?、クリエイターが集まり気軽に交流できるモノづくり交流空間

くりらぼ多摩川での多様な活動

くりらぼ多摩川では、当初大学を中心としたワークショップや大田観光協会による「町工BAR」などのイベントが中心でしたが、近年では、区民が自主的に活動する「日曜くりらぼ倶楽部」や、クラフト作家・デザイナーのワークショップ、演劇など、拡張した多様な活動が行われています。

運営体制

おおたクリエイティブタウンセンター(OCTC)や大田観光協会が中心事務局となってマネジメントを行い、「大田・品川まちめぐりガイドの会」、「六郷用水の会」、地域の町工場、創作活動を行う団体や個人などをパートナーに位置づけ、「くりらぼ多摩川運営委員会」を組織しています。また同時に、大田区及び各種団体などの協力も得ながら、様々な活動を展開しています。

オープンDAY

くりらぼ多摩川では、毎週火・木曜(祝日を除く)11 時? 16 時にくりらぼ多摩川の事務所棟を地域に向けて開放しています。来場者の方に、施設の成り立ちや実施プログラムなどをご案内しています。スタッフが常駐し、地域住民と町工場の職人、クリエイターらとのマッチングに関する相談も受け付けています。

くりらぼ通信

くりらぼ通信は、くりらぼ多摩川での活動を発信するフリーペーパーです。2014年度に創刊され、当初は年に一度活動を総括する媒体として制作が進められていましたが、定期発行とさらなる情報発信を見据えて2016年11月から紙面をリニューアルし、これまで全9号発行されています。

05 おおたクリエイティブネットワーク

おおたクリエイティブネットワークとは

各地の産業都市では、高付加価値化を図るために、デザイナーやクリエイター等、創造人材との連携による、新たな製品開発や技術革新、デザイン化を狙って、町工場とデザイナー・クリエイターとのマッチングが企画されてきました。金属加工を中心とした大田区では、B to B 型の工場が多いこともあり、デザイナーとのマッチングが進んでいませんでしたが、ここ数年で、デザイナー・クリエイター・アーティスト・クラフト作家などの存在や活動が顕在化しています。

06 チーム仲間まわし

チーム仲間まわしとは

大田区の町工場には、各工場の専門技術を活かし、横請けのネットワークで製造・納品を行う「仲間回し」と呼ばれるモノづくりの特徴があります。おおたオープンファクトリーでの仲間回し体験プログラムの実施を皮切りに、町工場の職人を中心としたモノづくりの企画提案や情報発信、交流を行うプラットフォーム「チーム仲間まわし」が結成されました。

チーム仲間まわしによる情報発信・交流

おおたオープンファクトリーへの参加だけでなく、チーム仲間まわしの輪を活かした情報発信や交流が行われています。くりらぼ多摩川で実施されている「町工BAR」や川崎市鹿島田の交流拠点「鹿島田DAYS」での講演、メンバーどうしの工場見学や技術講習会など、幅広い活動を展開しています。

メンバー募集

チーム仲間まわしでは、大田区を中心とした町工場で働く方を仲間として募集しています。興味のある方は、Facebookページよりメッセージをお願いします。

07 おおたクリエイティブタウンセンター

おおたクリエイティブタウンセンター(OCTC)とは

一般社団法人おおたクリエイティブタウンセンター(OCTC)は、「大田クリエイティブタウン構想」を実現すべく、その検討と実践的な活動の育成を図るために2017 年4 月に設立された法人組織です。モノづくり観光研究会・大田クリエイティブタウン研究会を母体としながら、公(一般社団法人大田観光協会ほか)× 民(工和会協同組合)× 学(首都大学東京・横浜国立大学ほか)の連携を通じて、「モノづくり」(従来の製造業によるものづくりに創造産業による高付加価値化を加えたもの)の進展と、これに基づく「まちづくり」の進展を、多主体連携によって実現するためのプラットフォームの構築、そして、これらをマネジメント(進行管理)する主体形成を目指して立ちあげられました。新しい「モノづくり」の力を生かして大田区の豊かな暮らしを実現したい、これに関わりたい、これを応援したいみなさんとともに連携して、豊かな場づくりの実現を図ります。

OCTCの前身:モノづくり観光研究会+大田クリエイティブタウン研究会

構想を描くだけでは物事は進まないため、具体的に実行するために、2009年より「モノづくり観光研究会」を立ちあげました。当時は、産業観光の盛り上がりをヒントに、外部の力をおおたに採り入れるための「モノづくり観光」の可能性を検討しました。大田区の製造環境や町工場、まちの状況の調査研究に始まり、これを基にしたプロジェクトの実践(おおたオープンファクトリーやくりらぼ多摩川)を行い、2014年からは「大田クリエイティブタウン研究会」と名称を変更し、プロジェクトを踏まえた調査研究、政策提言や学術論文発表なども行ってきました。その後、さらなる活動の発展を目指して、一般社団法人化(おおたクリエイティブタウンセンター)を行いました。

OCTCの事業内容

おおたクリエイティブタウンセンターでは、大田区でクリエイティブタウンを実現するための5つのミッションを定め、ミッションに基づく6つのプロジェクトやその支援を進めています。また、全国的な「モノづくりのまちづくり」の課題と可能性を確認しながら、国内外の産業都市とシンポジウムなどで交流を図っています。

会員募集

おおたクリエイティブタウンセンターの活動趣旨にご賛同いただける方は、法人運営に参画するとともに、その活動を支援する正会員、または賛助会員としてご加入いただければ幸いです。詳しくは募集要項をご確認下さい。
 
募集要項(正会員)
募集要項(賛助会員)

08 調査・研究・提案

調査・研究

おおたクリエイティブタウンセンター(OCTC)では、前身の大田クリエイティブタウン研究会の発足以来、大田のまちの魅力や資源を発見するため、実際にまちあるきを重ね、工場訪問調査や工場建築調査を実施してきました(大田区と町工場)。近年では、住民アンケート調査やオープンファクトリーのフィードバックとして工場訪問調査を実施し、これらをもとに住工共生のまちを目指してまちづくりを進めていきます。また、実施した調査・研究やプロジェクトの成果は、学術論文として学会や研究会で発表されています。(研究会による論文一覧

学生による提案

調査・研究によって明らかとなった大田区の魅力や資源を活かすために、学生を中心に様々な提案が行われています。大田区に存在する様々な工場建築を地域資源として分析し、具体的な物件として提案をした工場町家プロジェクトや大田ハウスプロジェクトの提案では、学生による提案が実際に町工BARへと実現しています(工場建築・工場町家)。また、新田丸エリアでの仲間まわしのネットワークを強化し、さらに地域住民やクリエイターを巻き込むことにより多くの人がモノづくり関わるような大田のまちの将来像を描いた「おおたクリエイティブ ・ファブタウン化計画」の提案も行いました。

モノ・まちBOOK

モノ・まちBOOKは、大田クリエイティブタウン研究会や大田クリエイティブタウンセンターによって行われた、「大田クリエイティブタウン構想」の検討や将来像に向けての提案、大田区「モノづくりのまちづくり」の活動実践、あるいは、大学を中心としたクリエイティブ・ファブタウンの発展に関する研究課題について、これまでの活動や提案をまとめたものです。これまで、「大田モノ・まちBOOK2011」(2011.11 発行)、「大田モノ・まちBOOK2012」(2012.08 発行)、「大田モノ・まちBOOK2014」(2015.03 発行)、「大田モノ・まちBOOK2018」(2019.03 発行)の4冊の成果報告をしてきました。

論文・研究成果等

●岡村祐・野原卓・川原晋(2019):
「東京都大田区を対象としたクリエイティブタウンの取り組み その1」,観光科学研究第12号,pp.65-70 , 2019-03
●岡村祐・川原晋・ 野原卓(2016):
「産業観光まちづくり」における「エントリーモデル」としてのオープンファクトリー(工場一斉公開プログラム):「おおたオープンファクトリー」の事例分析」,2016年度日本建築学会大会(九州)都市計画部門研究懇談会「観光地域は都市計画・まちづくりに何を期待するのか?」,日本建築学会、pp.25-28
●岡村祐・川原晋・ 野原卓(2016):
「東京都大田区を対象とした大田クリエイティブタウン研究会の取り組み その5」, 観光科学研究 第9号 pp.149-152, 2016.03
●岡村祐(2014):
「モノづくりのまち大田、動き出す ー「大田クリエイティブタウン構想」とその実践ー」, LIXIL eye, No.7, pp.44-45
●川原晋・岡村祐・野原卓・豊田純子(2014):
「中小工場集積地の産業観光まちづくり手法としてのオープンファクトリー」, 産業立地, Vol.53, No.6, pp.27-31
●岡村祐・野原卓・川原晋(2014):「東京都大田区における大田クリエイティブタウン構想と実践」, 季刊まちづくり, No.42, pp.104-115
●野原卓・岡村祐・川原晋・阿部なつみ(2014):
「創造拠点の挿入・くりらぼ多摩川 ―大田クリエイティブタウン構想と工場長屋の改修を通じて―」, 日本建築学会大会建築デザイン発表梗概集, pp.36-37
●岡村祐・川原晋・ 野原卓(2014):
「東京都大田区を対象とした大田クリエイティブタウン研究会の取り組み その4」, 観光科学研究, No.7, 首都大学東京観光科学域, pp.53-57
●岡村祐・川原晋・ 野原卓(2013):
「東京都大田区を対象とした大田クリエイティブタウン研究会(旧モノづくり観光研究会)の取り組み その3」, 観光科学研究, No.6, 首都大学東京観光科学域, pp.177-182
●野原卓・川原晋・岡村祐(2012):
「モノづくりのまちからクリエイティブタウンへ ~大田区での取り組み~」, 2012年度日本建築学会(東海)都市計画部門パネルディスカッション資料, pp.55-58
●山根一斗・岡村祐・野原卓・川原晋・杉原弥永子・井上翔太・佐藤圭太(2012):
「中小工場集積地域におけるオープンファクトリーの立案プロセスと方法論構築の試み -東京都大 田区におけるモノづくりまちづくりの統合的アプローチによる地域活性化研究(1)-」, 日本建築学会大会学術講演梗概集
●岡村祐・野原卓・川原晋(2012):
「東京都大田区を対象としたモノづくり観光研究会の取り組み その2:首都大学東京大学院観光科学域におけるPBL報告」, 観光科学研究, No.5, 首都大学東京観光科学域, pp.185-190
●村松智史・岡村祐他7名(2011):
「東京都大田区におけるモノづくり観光の実験的取り組み」, 2011年度都市計画ポスターセッション
●岡村祐他8名(2011):
「東京都大田区を対象としたモノづくり観光研究会の取り組み:首都大学東京大学院観光科学域におけるPBL報告 その1」, 観光科学研究, No.4, 首都大学東京観光科学域, pp.123-127
●岡村祐・野原卓・川原晋(2010):
「モノづくりのまち」の空間的・社会的特性に関する研究 ?東京都大田区を事例としで」, 2010年度都市計画ポスターセッション, 優秀ポスター賞受賞